☆ 野田淳子コンサート通信 ☆
「歩きつづけて」bP4
(2001年11月発行)

マジック&ミュージック 

高山智津子(絵本研究家)

淳子さんの歌には、魔法の力があるのではないかと思います。淳子さんの歌には、マジック&エモーション、感動が行動への始動力になります。いちど淳子さんの歌に出会ったら、忘れられないと思います。

宇宙の果てまでも響く透き通るような美しい声、そして、涙腺を震わせてくれるリリッカ(叙情)な歌。「さくら」は、いつ聞いても泣けてきます。私は、さくらを想って、小さな庭に一本だけ桜の木を植えました。「千羽鶴」を聞くと、“平和への行動”に力がみなぎります。

そして、もうひとつ。淳子さんの選曲には隠されたメッセージとしてレジスタンスが感じられます。いつぞやのリサイタルのとき、割れるようなアンコールの拍手に応えて「大きな古時計」ヘンリーワーク作曲を歌ってくれました。私は、私の人生を歌ってくれているように心の奥に響きました。それは、私の父(明治生まれ)が機嫌のいいときハミングしていたのが、ヘンリーワーク作曲の「ジョージャーへの行進曲」でした。私の息子の好きな歌は「大きな古時計」です。

先月、NHKの番組で、このヘンリーワーク作曲のルーツを訊ねる旅が放映されていました。何と、ワークは、リンカーンの奴隷解放に関わったゆかりの人だったのです。 ワークは、自由への叫びと、人間性を求めた切なる思いを込めて「大きな古時計」を作曲したのでした。そのことを知ったとき、淳子さんの、感性の鋭さ、高邁(こうまい)さに改めて感動したのです。

淳子さんの「大きな古時計」「千羽鶴」「さくら」etc…を、もう一度聞きたい、日本中の人に、いやすべての国々の人に聞いて欲しいと思っています。

来年は(いつかきっと)北海道根室千島からはじまって、日本列島北から南へのリサイタルを……企画したいと夢見ています。野田淳子リサイタルをひろめたい症候群のひとり、追っかけ老女 、高山智津子でした。

 

<シリーズ> 野田淳子と私
 無実の叫びを紡ぎあげた曲「父へ」

伊賀カズミ(日本国民救援会)

かつてこのようなしなやかで柔軟な精神の持ち主を私は知らない。どんな対象物に接するときも、常に真摯に且つ誠実に、そして新鮮な感性で向き合う人。

今回、改めて彼女のそのしなやかな精神に触れ、益々ファンになりました。芦別事件の支援運動以来、長い間救援運動を一会員として支え続けてきた彼女に対し、昨年の一月新たなお願いをしました。

都島の大阪拘置所に一緒に行って欲しい、そして無実を訴え続けている阪原弘さんに面会して欲しい、何ともはや無謀で無遠慮なお願いでした。でも彼女はいやな顔ひとつせず、一度ならず足を運び、初対面の阪原さんを、その目と心でしっかりと包み込んでくれました。そしてその想いを自ら昇華させ、「父へ」という素敵な曲を創り上げてくれたのです。聞くたびに涙が、そして力が湧いてくる曲です。

「千羽鶴」「この夜を越えて」など彼女の代表作といわれる作品に共通するもの、それはまさしく彼女の豊かな感性。対象に接し、突き上げる心の奥深い叫びを、ひとつひとつ丹念に拾い集め、紡ぎ直して曲にする。何とも素敵な作業です。ただし、ご本人にとっては生みの苦しみに匹敵する作業でしょうが……。勝手ながら私としては彼女の生みの苦しみに立ち会ったものとして、今回の曲「父へ」をともに大切に育てていきたい、そして阪原さんを一日も早く家族のもとへ取り戻したい、同時にこんなにも感性豊かな「野田淳子」というプロシンガーの内面をもっと近くで観察してみたい、そんな欲求に駆られています。

蛇足ながら、思わぬ展開で救援会府本部の事務所旅行が3泊4日北京に決まり、まさかまさかの展開で淳子さんも同行、笑い溢れるオモロイ旅でした。淳子さんという人を身近で観察できた4日間、思ったとおりというか、それ以上というか、ほんとに純真無垢、子供のように柔らかな心と、今なおの向上心溢れる人柄に、ホント惚れちゃいました。

光一さん、ゴメンナサイ。これからも公私ともに淳子さんと深みにはまる予感ありです。ときには光一さんもご一緒に……どうぞよろしく!

 

コンサートの感想

2001年8月 野田淳子コンサート(兵庫県波賀町)の感想文集から

・目の見えなかった私が目が見えるようになった。その時は夫の命の終わるときでした。夫の目を私はいただいたと思っています。目が見えるようになって、見えなくなったものがあることに気がつきました。ありがとうございました。野田淳子さんの歌声を聞いて自分自身を取り戻したいと思いました。私らしく、自分らしく、生きればいい!それでいい、今自分にいいきかせています。

・きれいな歌声、女性らしい優しいトーク。コンサートで泣いたのは初めてだった。本当に良かったです。

・今日は子どもと一緒にコンサートを聞かせていただきました。とても楽しいひとときを過ごすことができました。

・思いは一緒やなー 子を持つ母として最近の事件に心傷ついているのは誰でも同じやなあーと胸が熱くなりました。ありがとうございました。

・時間のたつのも忘れていました。心安らぐひとときでした。手話も覚えて勉強になりました。

・波賀町でのコンサート、聴かせていただき、たいへん感動いたしました。ありがとうございます。どの曲も、それぞれに思いが込められていて、素晴らしかったです。金子みすヾの詩の曲も素敵でしたし、「千羽鶴」は私自身、幼い2人の息子の父親なので、涙が出そうになりました。
 私も歌うことが好きで、ギターを弾いてよく歌います。歌う曲は、ほとんど子どもにむけたメッセージソングです。 あなたの曲やお話にも、同じ思いが込められていて共感いたしました。私もあなたのようにやさしく、そして力強く歌うことができれば、と思います。またコンサートなどで、お会いできる日を楽しみにしております。(M・Y)

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